ずいぶん以前のことですが,アダルトビデオの中の女優さんと男優さんとの間で,次のようなやりとりがありました.
女優「誰?」
男優「オレの先輩.〇〇ちゃんのファンなんだって」
女優「?」
男優(先輩に対して)「好きにしていいですよ」
女優「???」
これは,女優さんと男優さんが性行為(と思われる行為)を終えた後に,突然その部屋に男性が入ってきた時のことです.
女優さんが驚いて,ベッドのシーツで身を隠しながら男優さんに発した「誰?」という言葉以降のやり取りです.
ここで,「好きにしていいですよ」というのは男優さんが先輩に発した言葉ですが,その意味としては,その女優さんを「好きにしていいですよ」というものでした.
当然,女優さんとしては「???」となったわけですが,私としても同じように「???」となったものです.
先日,元大阪地検の検事正であった弁護士が,在職中の部下に対する強制性交罪で逮捕起訴されました.
新聞等の報道によれば,その元検事正は,犯行時に,その部下に対して
「これでお前も俺の女だ」
と述べたとのことのようです.
アダルトビデオの中では,性交渉(と思われる)行為が行われ,時には,レイプシーンかのようなものも存在しますが,それは演技だとしても,「好きにしていいですよ」という発言は,正直いただけないなと思いました.
その女優さんが誰とどのようなことを行うか,ありていにいえば,その先輩と呼ばれる方と性交渉(と思われる行為)に及ぶかどうかは本人が決めること,本人しか決められないことのはずです.
それを第三者がそのような発言に及び,その先輩と呼ばれる方が「そうなんだね」と誤解して何らかの行為に及ぶというのは,アダルトビデオの世界であっても,正直よくないと思ったものです.
そして,現実の世界で,おそらく,性犯罪の嫌疑をかけられた被告人を訴追し,刑罰の執行を求めたことがある元検事が,こともあろうか,安易に「俺の女」という発想に至ることがあまりにもいただけないと思ったわけです.
もちろん,犯罪(同意なく性交渉)に及ぶこと自体許されませんが,そのような発言を聞くにつれ,そもそも,そのようなことをやりかねない人だったんだなとの印象を強く有してしまいます.
大阪地検で司法修習を受けた私としては当時,修習やクラブ活動(バスケット)を通じ,事務官さんと仲良くさせていただいたこともあり,この方と一緒に仕事をされてきた事務官の方々が,人権意識に欠けたハラスメントにより,非常に苦労されたのではないかと思ってしまいます.
被害者が,1日も早く,平穏な生活を取り戻せることを願います.