人身取引と労基法違反

 タイ人の12歳の女性が人身取引の被害に遭い,マッサージ店で働かされたというニュースが最近あったと記憶しています.
 犯罪自体が秘密裏に行われるものであることからすれば,被害者が見つかって保護されたことは良かったと思います.

 ただ,このニュースを見て,ほとんどの方が「人身取引」という記載から誘拐,略取,人身売買といったイメージを持つだろうと思いますが,逮捕された被疑事実は,労働基準法56条違反だということにあまり気づいていないのではないかと思います.

 労働基準法には,強制労働の禁止(5条)という規定もあれば,未成年者を許可なく働かせてはいけないという規定もあります(56条)。

 そのため,労働基準監督署が,この事件で同法56条違反を理由に逮捕することは可能といえば可能ですし,むしろそうだろうとも思ったりもしますが,実際はそうではなく,警察(警視庁)が捜査して逮捕に至っています.

 警察も,刑法の略取,誘拐,人身売買の罪(224条〜)で捜査して逮捕するなどすれば,労働基準法56条違反を理由に逮捕する必要はないのですが,そのためには,営利目的や,それが売買契約によるのかなど,被害者の保護を急ぐ必要がありながら,その立証が難しいという使い勝手の悪さがあります.

 そのようなこともあり,未成年者を許可なく使用したという労働基準法違反が使い勝手が良いということから,警察としては,この規定を用いて逮捕に至ったのだと思われます.

 過去,労働基準監督官をしていた私としては,当時もそうでしたが,このような記事を見ると,ちょっと,モヤモヤしてしまいます.