外国人政策について

 つい先日まで,外国籍の被疑者の弁護人でした.
 要するに,「犯罪を行ったと疑われて逮捕・勾留された外国人」のために,国選弁護人として活動していたということです(最寄りの警察署ではなかったので,通うのが,結構大変でした.細かい話をする時は通訳も必要で,手間がかかります.).

 ここで,
 「犯罪を行ったと疑われて逮捕・勾留された外国人」
と聞くと,どのようなイメージが思い浮かぶでしょうか?

 先の参議院選挙で,外国人に対する生活保護費の支給等を問題として主張した政党が一定の支持を集めました.
 また,とある政党の党首選では,奈良公園の鹿を蹴り上げる外国人がいる,通訳人が見つからず起訴できない外国人がいるなどということが,事実かどうかが明らかにされないまま述べられていました.

 事実かどうかは別に,島国である日本において,このようなことを言われれば,外国人に対して悪いイメージしか湧かないだろうと思います.まして,犯罪の疑いも加われば尚のことだと思います.「生活を保護する必要ない」っていいたくなる気持ちも理解できなくもないです.

 しかし,私が弁護活動を行った外国人被疑者は,10年以上日本で暮らし,日本の企業で働き,税金や社会保険料を納め,住宅を購入し,そのためのローンを組んで滞納することなくそれを支払い,子どもは日本人も通う(おそらく公立)の小学校に通い,子どもの所属するミニバスケットボールクラブのLINEグループに両親が登録してその活動に参加し,現在,永住権の申請をしていたという方でした.

 そして,その被疑者は,差し入て欲しいものとして,着替え以外に,家族の写真を希望しました.
 そんな被疑者は,不注意により犯罪の疑いはかけられてしまいましたが(捜査機関ではなく私の意見です),正直,

 「(私よりも,断然)日本人っぽいよね」

と思ったところです.

 警察署での面会を終えて帰ろうとする頃には,「先生,次はいつ来てくれます」という,日本人の被疑者と同じことを言います.職場の上司とも電話で話をしましたが,「真面目だ」という評価しか聞こえてきませんでした.
 間違っても,奈良公園の鹿を蹴り上げたりするようには見えません.

 なお,私の場合,制限速度違反以外の法律違反はしないように心がけていますが(?),参加するグループLINEも数えるほどしかありませんし,他の参加者と日常的にコミュニケーションをとっているわけでもありませんし,子どもの学校での保護者としての活動も特段していませんし,社会的活動も十分とはいえませんし,納税額もたかが知れています.住宅ローンを組んで自宅を購入することで地域の経済にも貢献しているともいえません.
 特定の方々が想定する,模範的な国民像からは相当外れているはずです.

 だからといって,私から国籍を剥奪し,国外に追放するのは勘弁してほしいところですが,このような外国人が存在することを,日本人もそうですし,外国人もよく知るべきだと思ったところです.
 外国人に対するイメージが変わるはずです.

 そして,これから人口減少が進む中で,外国人による労働力の補充等は避けることができないはずです.
 外国人に対し,日本国内の法律を守らせるために,国外退去事由を並べてそれを強調するよりも,日本で勤勉に働き,公租公課を収め,ルール等を守ることができれば,何かあった時でも,生活保護により一時的に生活が保障され,あるいは,病気となっても,公平に医療にアクセスできることなどを強調することのほうが重要ではないかと思います.

 日本の社会保障制度のもとで,日本で住宅ローンを組み,社会の中で子を育て,永住することも期待できるということが強調されれば,あえて違法な行為に及ぶようなことはしないはずです.
 そのような面が,外国人に周知されるべきではないでしょうか(もちろん,日本人に対してもです.).

 アジアから日本へ来る外国人とどう関わり何をどう規制するか,高市総理が,ASEAN重視の外交姿勢を示したことは,上記のような考えに沿うのではないでしょうか.

 現政権における右寄りな考え方が,少しでも和らぐことを期待したいと思います.