春日署の留置管理係

 とある12月の夜,事務所近辺を歩いていたところ,60ないし70代の男性と思われる方が道路の端のところに倒れていました.その状況は,酔っ払ってロープに引っかかって転倒して,そのままその場に寝込んでしまったものでした.

 そのため,その方に声をかけ,立ち上がれるかどうか,帰路に着けるかどうか,家族に来てもらうかタクシーを呼ぶかなど,30分ほどその場でやりとりしましたが,最終的に,警察に通報して保護してもらい,私はその場を後にしました.

 その方は,これまでも何度か警察にお世話(保護されたという意味です)になったことがあるようで,警察に対する愚痴のようなことも述べていました.
 そして,私が通報したことを不快に思ったのだと思います.警官に保護されながら,私に向かって「名前は」と尋ねてきましたが,私はそれに応えることなく,心の中で,

 「春日署の留置管理係は親切な方が多いから大丈夫ですよ」

と言いながらその場を後にしました.

 ここで,警察署の留置管理(課・係)というのは,刑事課の警察官のように捜査を行う部署ではなく,逮捕・勾留された方が警察署内で過ごすにあたって,その管理を行う部署です.
 勾留されている方に対する親族等からの差し入れを受け付けたり,警察署内での所持品や所持金の管理などをすることを業務としています.上記の酔っ払いの方のように,一時的に保護された方の対応もこの係が行うはずです.
 また,私が弁護人として被疑者(勾留されている方)などに面会に行くと,その受付対応をするのも留置管理係の方々です.
 私の場合,事務所の所在地が大野城市ということもあり,春日署に行くことが多くあるのですが,春日署の留置管理係(正確には,春日署は県警本部の分室という扱いのようです)の方々は,かなり,親切に対応してくれるという印象を私は持っています.

 春日署に勾留中の被疑者(まだ20歳になったばかりの女性)で,2か月後に出産を控えている方がいました.
 私が,とある事情からその方の弁護人となりながら,選任後1週間ほどの時点で裁判所から解任されることが濃厚となったタイミングで,被疑者に,春日神社で購入した安産のお守りを差し入れようとしました.

 ご存知の方もいるかと思いますが,警察署への差入れ可能なものには事細かに制限があり,当初は,留置管理係から「お守りは差し入れできません」という対応を受けましたが,問い合わせに対応してくれた方は,後ろにいる上司に相談してくれたんだと思います,「(弁護人の)業務として必要であれば可能です」と答えてくれました.

 そのため,警察署に赴き,受付で「被疑者との信頼関係の維持のために必要です」と説明したところ,受付の係の方も「わかりました」と答え,私がお守りだけを差し入れようとしたところ,その受付の方は,「袋は?」と尋ね,「ここに『袋 1枚』と記載してもらえればこれも大丈夫です」と,私が手にしていた,「春日神社」と印字のある袋も一緒に差し入れるよう勧めてくれました.

 ノートやペン,あるいは裁判の証拠を差し入れるならまだしも,弁護活動に必要かと言われれば,お守りなんて必要ないはずです.留置管理係の方々も,そのことをわかっていたはずですが,そのような対応をしてくれたものです.

 また,別の機会のことですが,私が警察署に行き問い合わせを行った際,無回答で門前払いをされたことがありました.そうしたところ,春日署の当時の課長だったと思いますが,対応した係員について,対応が不十分であったと謝罪の電話を事務所にかけてきたことがありました.

 そのほか,私がとある事件の弁護人となった際,43日間連続で,毎朝接見に春日署に行ったことがあったのですが,受付を対応する方がほぼ毎日同じ方だったため,「おやすみはとれてます?」と尋ねると「ははは」と笑いながら,「先生もね」という顔をされたこともあり,そんなこんなで,半ば顔見知りという関係にもあるからかもしれませんが,春日署の留置管理係には,悪い印象はありません.

 酔っ払って道に倒れていた方に,心の中で「春日署の留置管理係は親切な方が多いから大丈夫ですよ」と呟いたのは,以上のような理由からです.

 春日署の留置管理の担当の方,今年はあまりそちらにお伺いする機会はありませんでしたが,今後とも,どうぞよろしくお願いします.

 なお,誤解のないように念の為申し上げれば,私が警察に保護を求めたことについて,「良いことをした」という感覚は全くありません.
 もし,私が何もしなかった場合,路上で寝てしまって凍死されても,自動車に撥ねられてしまっても後味が良くないというのがその動機です.「あの時110番通報していれば」という後悔を抱えて今後の人生を生きることが嫌だと考えた利己的な動機でしかありません.

 私も,酔っ払って自宅の玄関前のみならず,夜の屋外で寝てしまった経験は何度かあるため,その心境として,警察に保護されず,自力で帰宅したいという気持ちは痛いほどわかりますが,上記のような利己的な動機を理由に,通報した次第です.