選択的夫婦別姓を反対する方の理由が私にはわからない.
今朝の新聞で,選択的夫婦別姓に関するとある政治家の発言として「国のかたちに関わること」「社会の根幹に関わること」という表現がされていました.
ここでいう「国」や「社会の根幹」ってなんなんでしょうね.
おそらく「国のかたち」というのは,同じ記事内で引用されていた「家族一体の氏(姓)は残したい」という言葉に表される考えがそのことなのだと想像します.
家族仲が良いこと自体を否定する気はありませんし,一般的にこれを否定することは難しいはずです.
しかし,選択的夫婦別姓を制度化したところで,同じ姓を名乗ることを通じて「家族一体」という観念を大事にしたい方はそうすれば良いだけだし,そのようなパートナーを見つければ良いだけのことです.
同姓を名乗りたくない人に対し,同姓とすることが正義だと押し付けうるだけの理由はないはずですし,夫婦別姓の選択肢を与えることを妨げる理由にはならないはずです.
また,「社会の根幹」ということについては,「国のかたち」よりは幾分,国民の生活レベルでの問題としてこれを捉えようという意識は汲み取ることはできます.
しかし,「婚姻関係にある=同姓」という推定が法律レベルで認められなくなくなるというだけであって,それ以上に何かが変わるわけではないはずです.
(形式はどうであれ)戸籍制度だって残るでしょうし,相続等に関わる親族関係を辿ることができなくなるというものでもないはずです.
そのような実務的なレベルの問題意識であれば,未だに新500円硬貨が使えない券売機が存在することの方が私にとっては支障のレベルは高いと思います.
このことについて,別の誌面では,安楽死の議論の中で,選択的夫婦別姓の議論を取り上げて,いずれも自己決定の問題だと述べていました.
つまり,安楽死を認めることは,誰の意思も強制することはなく,「死を選ぶ権利」を行使ししたい方にこれを可能にするだけであり,そうではない方に対して,なんらかの義務を強制するものではないということです.
これと同じで,選択的夫婦別姓を認めることは,すべてのカップルが別姓になることを強制するものではなく,反対に,これを認めないことは,夫婦がどちらかの姓を選択することを強制すること,自己決定を認めないものだということです.
さらにいえば,今の時代,給料についても,労働基準法は通貨払いを原則としながらも,同意があれば口座振込だけでなく,デジタル払いまで可能となりました.このことは,口座振替やデジタル払いが強制されるというものではなく,通過(現金)で受領したい方は,引き続き,そうできるというものです.
ここまで述べても
「いやいやいや,そうは言ってもね,給料と家族の姓とは違うからね・・」
などと言って,選択的夫婦別姓に反対する方はいると思いますが,私は,別にあなたがパートナーに対して同姓であることを求めることを妨げるつもりはありません.
自分の立場でいえば,これが法制化されたからといって,私自身,配偶者に対して別姓を強制するつもりもありません.配偶者が元の姓に戻したいと言えば,そうすれば良いと思いますし,同姓のままでいたいというのであればそれを妨げることもありません.
だから,「国のかたち」「家族一体」などといった抽象的な理由を持ち出して,他人の自己決定を妨げ,この問題だけに関わらず,自身の理想とする国家観や家族観を押し付けないでほしい.
いずれにしても,これを反対する理由が,私にはわからない.