人身取引と労基法違反

 タイ人の12歳の女性が人身取引の被害に遭い,マッサージ店で働かされたというニュースが最近あったと記憶しています.
 犯罪自体が秘密裏に行われるものであることからすれば,被害者が見つかって保護されたことは良かったと思います.

 ただ,このニュースを見て,ほとんどの方が「人身取引」という記載から誘拐,略取,人身売買といったイメージを持つだろうと思いますが,逮捕された被疑事実は,労働基準法56条違反だということにあまり気づいていないのではないかと思います.

 労働基準法には,強制労働の禁止(5条)という規定もあれば,未成年者を許可なく働かせてはいけないという規定もあります(56条)。

 そのため,労働基準監督署が,この事件で同法56条違反を理由に逮捕することは可能といえば可能ですし,むしろそうだろうとも思ったりもしますが,実際はそうではなく,警察(警視庁)が捜査して逮捕に至っています.

 警察も,刑法の略取,誘拐,人身売買の罪(224条〜)で捜査して逮捕するなどすれば,労働基準法56条違反を理由に逮捕する必要はないのですが,そのためには,営利目的や,それが売買契約によるのかなど,被害者の保護を急ぐ必要がありながら,その立証が難しいという使い勝手の悪さがあります.

 そのようなこともあり,未成年者を許可なく使用したという労働基準法違反が使い勝手が良いということから,警察としては,この規定を用いて逮捕に至ったのだと思われます.

 過去,労働基準監督官をしていた私としては,当時もそうでしたが,このような記事を見ると,ちょっと,モヤモヤしてしまいます.

17

 昨日,黒い子猫を保護しました.
 改めて数えたところ,我が家で保護した猫として,17匹目がこの子でした(全て我が家で飼っているわけではありません.).

 ただ,保護して驚いたのが,耳がカットされていたことです.
 耳の先がカットされるのは,去勢または避妊されたことがわかるようにするためですが,その子は,避妊手術に適した月齢には至っていないように思えるほど,まだあまりにも小さく,表情もまだまだ子猫そのものです.

 そして,何より人懐っこい(お母さんを探すような鳴き方をして,抱っこすると腕の中にうずくまって丸くなろうとします.)ことです.避妊するまでは,どこかの人の家で飼われていて,その後捨てられたんじゃないかと疑わざるを得ないほどです.

 ミルクをあげなければならないほどの子猫ではなく,避妊も済んでいることは大変助かりますが,これから,里親が見つかるまで我が家で預かりますが,騒がしい日々が続き,先住猫にとっては穏やかではいられない日が続くことは間違いないですね.

 関心のある方は,ご連絡ください.
 お引き取りの申出をいただけることは大変ありがたいですが,その場合,猫の飼育をするのに適した環境にあることは確認させていただきます.

やはり「女性総理」なのか?

 高市さんが総理大臣となり,連日の外交の状況を新聞で読む限りは,無難にこなしているんだろうという印象を持っていました.

 以前,「女性総理」ではなく「総理」と認識されるようになってほしいということを,つまり,高市さんではなく,それ以外の方の認識がそのようになって欲しいということを述べました.
 そのため,高市さん本人においては,外交の場面でも,男性か女性かということが問題とされることなく,日本を代表するものとして,毅然とした態度をとって欲しいと思っていたところです.

 しかし,とある記事で,トランプ大統領と米軍基地に同行した高市さんの様子を見て,「愕然とした」との批評を目にしました.

 普段,テレビや動画(一定のものを除く。)を見ない生活(活字を読むことを中心とした生活)を送っているため,「?」となり,その記事の言わんとすることがただならぬように思えたため,ネットでその映像を探してみました.
 確かに,「愕然とした」というのはよく理解できました.

 トランプ大統領から背中に手を当てられ,(キャピキャピと)にこやかに拳を上に突き上げながらぴょんぴゅんと飛び跳ね,そして,肩を抱き寄せられるという,ちょっと,ため息しか出ないですね.

 トランプ大統領から,安倍さんもそんなふうにされていましたっけ?
 今のアメリカと日本は,要するにそのような関係なんでしょうか?

 例えが悪いですが,以前,何らかの方の著書だったと思いますが,
 「愛人に金庫番をさせると良い」
 という記載(聞いたことかもしれません)があったように記憶しています.
 要するに,男は裏切るが「愛人」は裏切らないということです.

 それに加え,昨日,高市さんは,国会において,安保法制に関する質問に対して,台湾への武力行使があった場合には,他の国と一緒に攻撃をともに行うことも可能とする「存立危機事態」になりうるという答弁を行ったようで,本当に,どうしたもんだろうかと言葉を失いました.

 そのような例えが,その映像から映る2人の姿に重なってしまい,なんともいえない暗雲とした気持ちになってしまいました.
 アメリカに,お金だけでなく,安易に,日本の平和すらも売り渡してしまいそうで,なんともモヤモヤがとれません.

外国人政策について

 つい先日まで,外国籍の被疑者の弁護人でした.
 要するに,「犯罪を行ったと疑われて逮捕・勾留された外国人」のために,国選弁護人として活動していたということです(最寄りの警察署ではなかったので,通うのが,結構大変でした.細かい話をする時は通訳も必要で,手間がかかります.).

 ここで,
 「犯罪を行ったと疑われて逮捕・勾留された外国人」
と聞くと,どのようなイメージが思い浮かぶでしょうか?

 先の参議院選挙で,外国人に対する生活保護費の支給等を問題として主張した政党が一定の支持を集めました.
 また,とある政党の党首選では,奈良公園の鹿を蹴り上げる外国人がいる,通訳人が見つからず起訴できない外国人がいるなどということが,事実かどうかが明らかにされないまま述べられていました.

 事実かどうかは別に,島国である日本において,このようなことを言われれば,外国人に対して悪いイメージしか湧かないだろうと思います.まして,犯罪の疑いも加われば尚のことだと思います.「生活を保護する必要ない」っていいたくなる気持ちも理解できなくもないです.

 しかし,私が弁護活動を行った外国人被疑者は,10年以上日本で暮らし,日本の企業で働き,税金や社会保険料を納め,住宅を購入し,そのためのローンを組んで滞納することなくそれを支払い,子どもは日本人も通う(おそらく公立)の小学校に通い,子どもの所属するミニバスケットボールクラブのLINEグループに両親が登録してその活動に参加し,現在,永住権の申請をしていたという方でした.

 そして,その被疑者は,差し入て欲しいものとして,着替え以外に,家族の写真を希望しました.
 そんな被疑者は,不注意により犯罪の疑いはかけられてしまいましたが(捜査機関ではなく私の意見です),正直,

 「(私よりも,断然)日本人っぽいよね」

と思ったところです.

 警察署での面会を終えて帰ろうとする頃には,「先生,次はいつ来てくれます」という,日本人の被疑者と同じことを言います.職場の上司とも電話で話をしましたが,「真面目だ」という評価しか聞こえてきませんでした.
 間違っても,奈良公園の鹿を蹴り上げたりするようには見えません.

 なお,私の場合,制限速度違反以外の法律違反はしないように心がけていますが(?),参加するグループLINEも数えるほどしかありませんし,他の参加者と日常的にコミュニケーションをとっているわけでもありませんし,子どもの学校での保護者としての活動も特段していませんし,社会的活動も十分とはいえませんし,納税額もたかが知れています.住宅ローンを組んで自宅を購入することで地域の経済にも貢献しているともいえません.
 特定の方々が想定する,模範的な国民像からは相当外れているはずです.

 だからといって,私から国籍を剥奪し,国外に追放するのは勘弁してほしいところですが,このような外国人が存在することを,日本人もそうですし,外国人もよく知るべきだと思ったところです.
 外国人に対するイメージが変わるはずです.

 そして,これから人口減少が進む中で,外国人による労働力の補充等は避けることができないはずです.
 外国人に対し,日本国内の法律を守らせるために,国外退去事由を並べてそれを強調するよりも,日本で勤勉に働き,公租公課を収め,ルール等を守ることができれば,何かあった時でも,生活保護により一時的に生活が保障され,あるいは,病気となっても,公平に医療にアクセスできることなどを強調することのほうが重要ではないかと思います.

 日本の社会保障制度のもとで,日本で住宅ローンを組み,社会の中で子を育て,永住することも期待できるということが強調されれば,あえて違法な行為に及ぶようなことはしないはずです.
 そのような面が,外国人に周知されるべきではないでしょうか(もちろん,日本人に対してもです.).

 アジアから日本へ来る外国人とどう関わり何をどう規制するか,高市総理が,ASEAN重視の外交姿勢を示したことは,上記のような考えに沿うのではないでしょうか.

 現政権における右寄りな考え方が,少しでも和らぐことを期待したいと思います.

開業14周年

 今月5日で開業14周年を迎えることができました.

 これまで関わってくださった方,ありがとうございました.

 これからも関わってくださるであろう方々,どうぞよろしくお願いします.

「女性総理」ではなく「総理」

 自民党の総裁選の結果,高市さんが総裁となりました.
 その結果,野党がまとまらなさそうな状況下では,おそらく,高市さんが,国会で首相に指名されることになると言われています.

 個人的には,リベラルな林(官房長官)さんがならないかなと期待していましたが,これで確実に右寄りな政治が続くことになると思います.
 ただ,自民党と公明党だけで法案等を可決できないという点では,過去の安倍元総理の頃とは違いますので,どの程度,右寄りの政権運営ができるかは実際に蓋を開けないとわからないと思います.

 ただ,この国で,女性が初めて総理大臣に就任する日が来るということは素直に歓迎したいと思います.

 そして,「女性総理」ではなく,男性であっても女性であっても(あるいはトランス等でも)その性別が取り上げられることなく,「総理」として認識されることが当たり前になる日が来ることを期待したいです.

経験

 弁護士として登録した当初,何よりも「経験」が欲しいと思いながらも,経験が浅いことを理由に仕事をいただけない,あるいは引き受けないことが許されないことは自明のことでした.
 そのため,経験も大事だが,手に入らないものを渇望するよりも,技術や能力を高めるべきだとの考えを第一のものとして,今に至っています.

 今週の火曜日4時50分に,我が家の一番古株のメス猫が息を引き取りました.
 その前の週の水曜日に動物病院の予約が取れ,検査を経て入院となり,今週の月曜日に退院し,それから12時間ほどが経過した後のことです.

 入院の際,動物病院の先生から,猫の状態についてはかなり危険で,検査で預かっている最中にも息を引き取るかもしれない(自宅で看取れないかもしれない)と説明を受けました.
 そして,検査の結果,基準値をはるかに超える検査結果を示されながら,糖尿病(による合併症を引き起こした状態)であると説明を受けました.

 そうは言っても,自宅に戻った所で軽快するとはとても思えず,迷わず入院しての治療を選択しました.そして,治療の邪魔にならない範囲で,入院中の猫に何度か面会にも行きました.
 月曜日には,入院の延長をお願いしようと考え,動物病院から要求された訳ではありませんが,前金を準備して面会に行ったところ,基準値からは外れているものの,最初の検査結果からすれば数値が下がりつつあるということでした.
 そして,猫のストレス軽減の必要もあるため,一旦は退院することになり,その際,金曜日に再度検査のために来院するように,あわせて説明がされました.

 しかし,おそらく先生はわかっていたんだと思います.

 このまま入院を継続したとしても,ほんのわずかな延命が期待できるかどうかでしかなく,入院したまま息を引き取るよりも,自宅に戻った方が良いということを.
 そして,金曜日に検査のために来院することもないであろうことを.

 さらには,そもそも,先週の水曜日に病院で最初に診てもらった時に,おそらくそう長くない(数日中)ということも.
 そして,費用を投じて入院・治療を選択したとしても回復することはなく,費用に見合った医療効果が得られないことも.

 けれど,それだけではなく,飼い主が,入院や治療という選択肢の提示を受け,それを選ぶことにより,動物が息を引き取った後に,「もっと早く気づいてあげれば」という後悔は残るとしても,「何もしてあげられなかった」という罪悪感がわずかであっても軽減されうることも.
 さらには,飼い主が入院を延長するという選択肢を選ぶ可能性があることも,そして,そうしない方が良いと理解(誤解)して退院するという提案を受け入れた方が,結果として自宅で看取ることができるであろうことも.

 おそらく先生はわかっていたんだと思います.

 先生は,初めてお会いした際,猫の状態を告げるにあたり,最初に「25年の経験からすれば」という前置きをして,私に対し,危険な状態にあると説明しました.
 その時,私の中で「経験」という言葉が用いられたことについて必要以上に頭の中に引っかかっていたのですが,猫の火葬も終え,通常の生活に戻らなければならない今になって,猫に対する治療も含めた我が家への対応の全てが,先生の「経験」によりもたらされたものであろうことを理解するに至っています.

 救えずに失われた命をいくつも経験し,飼い主からの心無い罵声などを浴びせられたことも多数あるんだろうと思います.
 我が家の猫を退院させる際に見せた数値の下がった検査結果については,さすがに嘘ではないと思いますが,感謝の気持ちもさることながら,同じ専門職の技術者として,大変勉強になりました.

他人の痛みは100年我慢できる?

 我が家の保護猫のうち,最も古株のメス猫が,おそらく,ここ数日中に死んでしまうだろうと思っています.
 餌を食べない,水も飲まない,水を飲ませても吐いてしまう,トイレもできず横たわったまま漏らしてしまう.
 かろうじて,姿勢を変えたり寝返りをうったりはまだできますが,顔だけ見れば,すでに意識があるのかないのか分からないような表情で,腹がわずかに上下に動く様子を見て,生きていることを確認できている,そんな状況です.

 この子は,約10年前にやってきた猫で,この子がいなければ,それ以降の保護猫も我が家にはやってこなかったはずです.
 反対に,不動産屋(管理会社)に猫が見つかり,そのおかけで,アパートからは追い出され,今のペット可の住居に引っ越さなければならなくなりました.自業自得ではありますが,そのおかげで,今の住居に引っ越したおかげで,家族の生活環境が良くなったのは間違いありません.

 なのに,異変を察知してあげることができず,昨日の仕事を後回しにしてでも午前中のうちに病院に連れて行かなかったことが悔やまれて仕方ありません.

 仕事も家事も,何も手につきませんね.

 猫が横たわっている側で,この子が家に来た時からのことを思い出してはいちいち涙ぐんで,通じることも覚えていることもないのに猫に話かけるという,まあ,不毛というか建設的でない時間を過ごしております.
 ようやく予約が取れ,検査のために病院に預けては来たものの,迎えに行く時は,息をしていない可能性も覚悟しなければならないと言われています.

 他方で,朝刊の記事には,イスラエルがパレスチナに地上戦による侵攻を開始することが載っており,さらなる死者の増加が予想されるとのことでした.そうでないとしても,これまでの数多くの犠牲者のことを考えれば,人類の過ち(と言っていいと思います)により多くの人の命・人生が失われたことが容易に想像でき,その事実の意味を理解することができるはずです.

 けれど,私はプラカード持って,国会前でデモをすることもしてませんし,救援物資を持って,ガザ地区へ行こうともしていません.
 何より,そのような惨状を想像しても,涙は出てこないですよね.

 政治家に対して批判的な意見をここでは書いたりもしますが,結局自分も,想像力のなさと,想像したことが自分の心理と行動に及ぼす影響は,「自分が死ぬことはない」と思って戦争を行う政治家とあまり変わらないのかもしれません.

 もうゴロゴロと喉を鳴らしてくれることもありませんが,横たわる猫を撫でながら,「他人の痛みは100年我慢できる」という昔聞いた言葉を思い出し,これから続くであろう猫に対する喪失感とどう付き合って生きていこうかと思い悩ませています.

石破さんの退陣について

 率直に言って,残念に思います.

 少数与党で,野党と部分的に協力しながら法案や予算を通したことは評価されないのでしょうか?
 自民一強による国会運営を20代の頃から何年も見てきた私としては,国会のあり方として,画期的とも言える変化をもたらしたように感じ,新たな政治に期待したところでした.

 これまでの「石破おろし」は,あくまでも,自民党内部の権力争いでしかなく,参議院選挙で負けたとしても,世論調査で「辞任する必要ない」の割合が高いことは,国民が退陣を求ていないことを意味しませんか?
 参議院選挙の結果について「勝てないとの民意」が示されたといったとある首相経験者もいましたが,石破さんは,それについても耳を貸さずに,信念を貫いて欲しかったですね.

 今回の参議院選挙の結果を踏まえ,自民党(それ以外の野党も含めた多く)の政治家がむしろ争うべきは,ポピュリズム的な政治勢力の台頭に対してであって,決して,党内の権力闘争ではなかったといえませんでしょうか.

 石破さんの述べた退陣の理由として「党内に決定的な分断を生みかねないと考えたから」というのは,石破さんであっても,党内の力関係には抗えなかったという意味であるとともに,そこを優先しなければならないという日本の政治の現状を表すものとして,特に,残念に思えてなりません.

2025年大野城市長選挙について

 今月の7日(日曜日)に,大野城市長選挙の投開票日を控えています.

 大野城市で開業して約15年間,この街を見てきました.
 商工会に入り,青年部で活動しているときには,今回の選挙に出馬しない意向を表明した,現在の井本市長と何度もお話しする機会を得てきました.
 そういった経験を踏まえて,今回の市長選挙については,女性の候補者が当選してくれるといいなと思っています.

 その理由は,あくまでも私の個人的な印象に過ぎないのですが,大野城市という街というか,組織というものが,どちらかというと家父長的な雰囲気が根強く残っているように感じられるからです.
 そのため,市長というトップに女性が就任することで,少しでも,そのような傾向が変わってくれないかと期待しています.

 そのように感じる理由の大きな理由は,商工会の女性部の存在と,商工会の要職に,男性しか就任していないことです.
 特に,女性部というのは,青年部が女性の加入も認められているのに対して,女性だけで組織する部であるとともに,その設置理由は,組合員の配偶者(妻)の活躍する場を設けるというのがきっかけだったようです.
 そして,そのことは,時代が変わった今でも,優秀な女性会員は,女性部長をやればよく,それより上の,会長副会長になろうという考えを持ちにくくすることに役立っているように思えてなりません.

 また,大野城市役所の幹部によるパワハラ問題も,そのような家父長的な雰囲気が優越的な関係に繋がり,そのような職場環境のもとで生じたものではないかと疑わずにいられません.

 もちろん,私の付き合いのある方々に男性が多いというのがそのような印象を私に抱かせているのかもしれませんが,そのほかに,女性候補者を推す理由を挙げるとすれば,選挙のビラの内容も理由の一つです.

 とある男性候補者のビラには「1」(日本一,オンリーワン,このまちが一番)という数字がいくつも掲げられていますが,「1」に当たるかどうか,定量的に計れない事柄にそのような数字を掲げるのは,正直なところ違和感があります.

 また「『思いをひとつに』がんばります!」と書いてあることも,このかたを支持しなかった市民は,その「ひとつ」の輪の中に入らなかったことで何か不利益に扱われないかと不安になってしまいます.
 少し話はずれますが,「ひとつ」の輪が形成されたときに,その中に入れない人を,特別に扱う(ケアする)ことは,もし,その「ひとつ」の中にいる人が,何らかの理由で特別な扱いが必要になったとしても,ちゃんとケアしてもらえるという安心感に繋がり,そのコミュニティーに安心して所属できる理由になると聞いたことがあります.学校のクラスを思い浮かべればわかりやすいと思います.

 ビラの内容については,そのほかにもありますが,この辺にしておきます.

 非常に感覚的・印象的な理由ではありますが,今回の選挙については,そのように考えています.

「不祥事」って何を指すの?

 福岡県弁護士会の副会長が,業務停止1か月の懲戒処分となり,副会長を辞任したとの報道がされました.名前はよく目にする方ですが,直接の面識はありません.
 懲戒処分とされた理由は,どうやら,依頼者に,調停を申し立てていないにも関わらず,申し立てたと虚偽の報告をしたからのようです.
 また,この弁護士は,弁護士会の処分では懲戒とならなかったのに対し,懲戒を請求した方から不服申立てがされたのち,日弁連により業務停止処分と決定されたものでしたので,福岡県弁護士会の自浄能力にも疑問が向けられる事態となってしまいました.

 そのため,ニュースの中で,弁護士会会長が「不祥事があったことを重く受け止めている」と述べたようですが,これは,何を「不祥事」と捉えているのでしょうか?
 その弁護士のやったことを指してのことでしょうか,それとも,福岡県弁護士会が,日弁連で覆ってしまう処分をしたことを指してのことでしょうか?

 実は,私も懲戒の請求を受けたことがあります.この時は,何ら処分を受けませんでしたが,請求の理由については,確かに,私が軽率だった(裏付けを十分に取っておくべきだった)と反省をしたものです.
 それだけでなく,実は,10年以上前のことですが,まだ,弁護士として登録して2,3年という間もない頃に,とある弁護士に対する懲戒処分を請求したこともあります.

 その弁護士は,弁護士会の副会長を務めたことがあるだけでなく,福岡では,かなり有名で,名の知れた方でした(おそらくご存命ですが,過去形にしています.).
 請求の理由は,私がその弁護士の事務所に電話をした時に,いきなり「払うもんか」「法律と契約が全ての人種だろうが」「ロースクールはどこだ!」など怒鳴りつけられたからです.

 弁護士となってまだ2,3年しかない当時の私でも,その弁護士の名前は聞いたことがありました.
 私は,とある依頼者のために,代金の支払いを求めて請求書を送付したところ,その弁護士と,その事務所に所属する6,7名の弁護士の連名の通知書(回答書)が送られてきて,支払いに応じないというだけならまだしも,公正取引委員会やメディアに告発するぞといった内容の,まあ,脅しのようなことばかり書かれたものでした.
 そのため,「何これ?」「告発するならわざわざこちらに知らせずに,さっさとすればいいのに」「口だけか」とため息をつきながら,一応,どのような意図なのかを確認するために,その弁護士の事務所に電話をしました.

 その時は,その弁護士本人ではなく,その事務所に最近入った新入りの先生が電話には出るだろうと思っていたところ,予想に反してその弁護士本人が電話に出るやいなや,上記のとおり「払うもんか」と怒鳴りつけられたものでした.
 そのため,「こりゃあかん,素人と一緒だ,話ができない」と思いながら,私は,電話機の録音ボタンを押し,その弁護士に最初から話をさせるために,要件事実として請求原因と言える内容について,「ちょっと,まってください」「まず,契約しましたよね」といって,それに対して,支払いを拒むだけの理由を述べるように促しました.
 そうしたところ,その弁護士が「ロースクールはどこだ」と言い出したので,「いってません」と答えると,「?」となり,「大学は?」と尋ねてくるため「東工大です」と答えると,電話越しでしたが,間の空き方から,その弁護士の頭にさらに「?」が浮かんだのは容易に想像できました.
 そうしたところ,「旧試験の合格者か?」と尋ねられたので,「最後から2回目です」と私は答え,「出身大学が関係するんですか?」と尋ねたところ,「どんな人種かと思って」と言い出し,結局,「払うもんか」と電話を切られました.

 電話を切られた私は,すぐに,電話の録音内容を文字に書き起こし,その弁護士の事務所にファックスを送り,「先ほどの電話の内容です.ご確認ください」だったと思いますが,そのような書類を作成して送信しました.そしてすぐに,その一連の発言について「品位を失うべき非行」に当たると主張して,福岡県弁護士会に懲戒請求を行いました.

 ところが,すぐに懲戒処分って決まらないんですね.
 そのため,身内だから甘い処分で終わらせようとしているのではないだろうかと思い,その弁護士以外の,回答書に連名で記載されていた弁護士についても,全員に対して懲戒を請求しました.

 そうしたところ,その弁護士以外の弁護士は,ただ名前を連ねただけで,その件には何も関わっていないということで,何も処分をしないこととなりました(本音を言えば,記名して押印した以上は同じだけの責任を負うべきだと思いますが,そうはなりませんでした.).

 しかし,電話で怒鳴りつけた弁護士については,事実確認のため,弁護士会に出頭するよう命じられ,事情聴取を受けたとのことです(私も,それに先立って事情聴取を受けました.).
 その結果,どうも,懲戒にするかどうか議論があり,通常であればそれほど時間を要しないようですが,半年ほど協議が続き,最終的に,綱紀委員会20名の委員において,多数決がとられたとのことでした.
 そして,残念ながら,9対11で,懲戒にしないという意見が多数となり,結果として懲戒とならなかったとのことでした.
 悔しかったですね.

 ちょっと,長くなりましたが,要するに,弁護士会の内部においても,身内だからという理論がまかり通っているのではないか(表立ってそうではないとしても,影響はあるのではないか)というのは,すごく気になるということです.

 辞任した副会長は,弁護士会の活動にあまり関与していないこんな私でも,比較的,会の月報などで名前を目にすることのある方でしたので,もしかすると,身内だということで何らかの理由をつけて,懲戒にしないことにしたのではないかと疑ってしまわざるを得ません.

 まして,私がこれまでに目にした全国の懲戒処分では,この件のように,依頼者に「嘘」を告げた場合に懲戒処分とされた事例を多く目にしていましたので,福岡県弁護士会においても,懲戒処分とすることが期待されたものと言えます.

 そのため,冒頭述べました「不祥事」というのは,その懲戒処分となった弁護士が依頼者に嘘をついたという行為について使われたのか,それとも,福岡県弁護士会が身内に対して便宜を図ったという意味で使われたのか,どちらなんだろうと考えてしまいました.

 ちなみに,私も含め,弁護士にもミスはありますが,間違った時,あるいは,仕事が遅れるなどして迷惑をかけた時には「ごめんなさい」しかないはずです.
 そこで嘘をつくということは,依頼者に対する背信的行為に他なりませんし,刑事裁判教官の言葉を借りれば,「過失ではなく故意になる」ということです.
 今回の件は,その先生ご本人にとっても,福岡県弁護士会にとっても,「不祥事」としか言いようがないと思います.

 2023年のことのようですので,現会長にとっては,やや気の毒な出来事だと思えてなりませんが,身体検査が甘かったということですね.

「昭和」には戻らないが,,,

 私は,「昔は良かった」「あの頃は良かった」などと,昔を懐かしむことはあまりしない方で,また,そのような思考をしないように極力心がけています.

 「あの頃よりは」今の方が進歩しているべきだというのが基本的な考え方です.

 その裏返しではありませんが,ハラスメントの相談などがあると,「昭和だね」「昭和ですね」という比喩的な表現がされることがあります.
 確かにその通りだなと,その表現に妙に納得してしまいます.

 例えば,自分も大人になり,これまで出会ってきた「大人」の方々について,ある程度は許すことができるようになっても,やっぱり,「こいつは許せないな」という「大人」の存在をおもいだすことがあります.その理由を考えると,「昭和だね」という表現がなんとなくしっくりきます(いや,でもあの中学校の先生に限っては,「昭和だね」では片付けられない,人の皮を被った「悪意」かもしれません.).

 ただ,最近,「昭和」の頃の記憶を懐かしく感じることがあります.
 それは,夏の暑さをまだ楽しむだけの余裕があったよな,ということです(厳密には,高校生(平成8年頃まで)はそうだったように思います.).

 私が小学生だった頃,暑いと言いながらも扇風機の風を家族で共有することで日常生活にそれほどの支障はなく,冷たい飲料や,冷房の効いた商業施設等に出かけることがささやかな楽しみでした.
 冷房は,一応,自宅にもありましたが,来客があるような場合以外は,ほとんど使うことはなく,冷房自体が生活に必須のものではありませんでした.
 日中でも,プールや公園で遊ぶことは当たり前で,また,川遊びなどで自然の涼を求める楽しさもあったように思います.

 また,中学,高校(大学もほぼそうですね)の部活を行う体育館の暑さは地獄に感じていましたが,空調のない中で,熱中症で倒れることもなく,なんとか過ごせていたのが実際のところです.

 ところが,ここ数年の暑さは,「暑さ」を楽しむような余裕はなく,暑さを避けるために窓を閉め切り,熱された外気が部屋に入ってこないようにすらしなければならない生活は,ストレス以外の何ものでもありません.
 たった数十年の人生を生きただけで,これだけの気候の変化を感じてしまうということは,とある外国の大統領は否定しているようですが,やっぱり,温暖化は進んでいるんでしょうね.

 そのため,快適な生活を手放すことには抵抗がありますが,それでも,将来のことを考えると,世界規模で温暖化対策に取り組むことは避け難いと思いますし,私よりも将来を長く生きる若い世代の方々は,もっと,大人(特に,昭和を生きた人間)に対して,温暖化対策についての要求をすべきように思います.

 とある著名人は,環境活動家のことを揶揄しながら,人間らしく技術革新で解決すべきだと言っていましたが,政治家がよく使う,その場しのぎで国民を納得させようとする時と同じような無責任さを感じてしまいます.
 実際に技術革新が起こる保障はありませんし,その著名人自身は,地球が壊滅的になる前には人生を先に終えているであろうことを容易に想像してしまいます.

 「昭和」的な社会や人間関係が再び訪れるようなことはあってはならないと思いますが,異常なほどの暑さのおかげで,昔のことを少しだけ懐かしく思い出すとともに,次回の選挙では,温暖化対策を公約に掲げる政党に比例票は入れようかと思っています.