従業員を注意したら反対に「パワハラです」と言い返されました

【相談内容】
従業員を注意したら,「パワハラです」とその従業員から言いかえされました。
これでは,問題のある従業員が好き勝手なことばかりしてしまいます。

【回答】
一般的に,何らかの言動がパワハラと言われる場合は,①その従業員自体への攻撃となっている場合,②従業員の行為に対する注意ではあるが,言い方に問題がある場合に大きく分けられます。
ですから,そのような場合でなければ,堂々と,注意すべきことを注意して問題はありません。

①の典型例は,頭を叩くなどの暴力を振るい,身体的に攻撃する場合や,「ばか」,「新入社員並みだな」だとか,その従業員自身の人格を言葉などで非難ないし侮辱して攻撃する場合です。

しかし,昔の時代劇ではありませんが「罪を憎んで人を憎まず」と言うように,その従業員自身が悪いのではなく,その従業員の「行為」を問題として指摘して,その改善を求めなければなりません。

職場内で上下関係はあるにせよ,お互いに人間であり,雇用関係の範囲で時間を共有するだけの関係である以上,身体的な攻撃はもちろん,個人の性格等の内面を攻撃することも刑法の犯罪にも該当しえますので,絶対に避けるべきです。

②の典型例は,例えば,従業員が,遅刻したときに,そのことについて「何度言えばわかるんだ」などと他の従業員の前で怒鳴りつけるような場合です。

遅刻したという事実自体は問題のある行為といえます。ですから,そのこと自体を注意することは問題とはいえません。
しかし,怒鳴りつけるという注意の仕方では,言い方自体が相当性を欠くことになりますので,やはり,パワハラとなりえます。また,他の従業員の前でとなれば,本人の名誉感情を侵害することとなり,その点で従業員自体への攻撃にもなりかねません(もちろん,密室であれば大声で怒鳴って良いというものでもありませんので,その点は取り違えないよう注意してください。)。

なお,パワハラ指針(案)では,従業員の問題行動を前提として,「一定程度強く注意すること」はパワハラに該当しない場合として例示されていますが,「一定程度強く」のニュアンスは非常に不明確です。
ですから,基本的には,感情的に注意するようなことは行わず,就業規則(服務規律規定等を含む。)に従い,指導書や注意書を交付するなどの対応を粛々と行うことをお勧めします。
また,上記①②の分類は,パワハラ指針(案)とは異なった視点での分類ですが,同指針を理解する際にも有用な視点だと考えられます。