懲戒解雇したい従業員がいます

【お問合せ事例】

会社のある従業員が,商品の代金を横領していたことが,最近,分かりました。この従業員を懲戒解雇しようと考えていますが,何か気をつけることはありますか?

【当事務所のアドバイス】

気をつけることはいろいろありますが,当事務所としては,懲戒解雇する必要がなければ,懲戒解雇も,普通解雇もしないようにアドバイスします。できる限り,自己都合退職してもらうようにしてもらいます。

その理由は,懲戒解雇することに実益がないからです。

確かに,会社としては,会社・従業員のみんなで稼いだ利益を,個人的に着服されることは非常に腹立たしいことですが,だからと言って,その従業員に制裁を加えたとしても何も良いことはありません。それよりも,損害を弁償してもらえるようにどうするかが大事なことです。

また,他の従業員に対して示しがつかないということもありますが,①横領したことを認め,責任を取って退職してもらった,②横領した金額は全額賠償することを約束させたことを周知できれば,それで十分と言えます。

もちろん,会社に退職金制度があり,懲戒解雇にしなければ退職金を満額支払わなければならない場合には,懲戒解雇を検討することにもなりますが,そうでない場合には,基本的には懲戒解雇だけでなく,普通解雇も勧めません。

解雇してしまえば,損害賠償について,建設的な話し合いもできなくなるでしょうし,場合によっては,解雇権の濫用だといって,訴訟を起こされる可能性が残ることになります。

それよりも,横領の事実を認めさせ,自責の念があるうちに,退職届を出してもらい,それとあわせて,損害賠償の方法を,書面で約束させることが最善の対応策だと考えられます。

以上のような理由から,当事務所では,お問合わせのような場合には,懲戒解雇も,普通解雇も,しなくてよければ,しないようにアドバイスをしています。