皇室典範の改正が議論されていますが,緊急事態条項や議員の任期延長など憲法改正が必要というレベルで議論されている他のことと比較すると,矛盾するというか,「セコイ」と思いますが,いかがでしょうか?
何を持って「セコイ」と考えたかというと,皇族の確保とかいうのであれば,憲法改正をしなければならないのではないかということです.
まず,天皇が世襲であることは,憲法2条が規定していて,皇室典範の定めに従い継承することとされています.
現在,養子案を含めて改正案が「了」とされているようですが,いやいや,「世襲」と憲法が決めている以上,憲法を改正するかどうかを議論して,国民投票をしなきゃいけないのではないかと思いませんか?
そもそも「世襲」とは,血縁関係を前提にその財産や身分を継承することです.
血縁関係のない旧宮家の方を養子に迎え,その方に子どもが生まれたとしても,その養子とその子との血縁関係はあっても,養親たる皇族との間で血縁関係が生じることにはならないわけです.
もちろん,民法という一般市民に適用される法律上の扱いでは,直系の親族として扱われますが,やはり,実子ではなく養子です.
そうすると,皇位の継承が「世襲」に限られる点は,憲法を改正しなければならないはずです.
しかし,今現在議論されているのは,憲法改正ではなく,皇室典範の改正です.
憲法を見れば,天皇や皇室に関連する条文は,第1項から第8条まで存在し,天皇の国事行為なども定めています.
テレビ等で見る限り,天皇や皇族って暇ではなさそうですよね.
そうすると,憲法において,継承の問題に関連して「世襲」に限ることを改正することもさることながら,形式的な国事行為なんかやめてしまって,外国の大使や公使の接受などに時間を使ったほうが良いように思いますけどどうでしょうか.
それに対して,緊急事態条項だとか議員の任期延長だとか,国会議員や政府与党の方々は,自分たちの権限を強化してその地位の安定をはかることばかり,憲法改正の議論として行なっています.
それ以外の憲法9条や自衛隊についても,安保法制で集団的自衛権の行使が,実質的に内閣の判断(ただし,「存立危機事態」というハードルはあります.)で行えるようにしているにも関わらず,さらには,武器も輸出し核の持ち込みも容認しようという政治家たちは,憲法9条の改正を行わなくてもそのようなことを実施できるようにしようとしているのに,憲法9条の改正を強く主張しています.
そもそも,国会議員である以上,憲法を改正することなく,法律で対処できるように知恵を絞って可能な限り立法をしたけれども,やはり憲法改正が必要だというのであるならば,国民に問えばいいです.
「9条があるから,ペルシャ湾に自衛隊を派遣できず,その開放が遅れたんです」というのであれば,そうしたらいいです.
しかし,そうではなく,法律の改正で対応できるのであれば,憲法改正を主張する前に,国会議員の本業たる立法行為として,そうすれば良いだけのはずですし,そうすべきはずです.
にもかかわらす,憲法を改正することなく,皇室典範という法律の改正の議論で,天皇の皇位継承をなんとかしようとするところは,国会議員としてセコくないですか?
「憲法を改正しなくとも立法でできることは可能な限り行います」
そういう考えなのかどうか知りませんが,この問題に関して,憲法改正を前提とした議論がなされているという報道に接したことはありません.
おそらく,国会議員たちは,皇室典範さえ改正してしまえば,憲法が規定する「世襲」についても,皇室典範でその意味を定めることができ,憲法に抵触しないと考えているのだと思いますが,理系出身の私からすれば,「世襲」の意義をそのように変更するのは,「今回に限り,数字の『2』は奇数として考えます」ということを言うに等しく,基本的に無理な話でしかありません.
そのため,本来的に,憲法改正の発議等をすることのできる国会議員が,真剣に天皇及び皇室ことを考えるのであれば,憲法を改正すべきであると議論すべきなのに,そのようなことをせずに,皇室典範の改正ですまそうとし,しかもこの先においては,憲法との矛盾・抵触を「解釈」でなんとかしようとする姿が強く予想されてしまうため,私からすれば,「セコイ」としか思われません.