天皇が,何日か前に,皇室典範の改正案についてコメントをしたと記憶しています.
その内容は,天皇が政治的行為をしてはならないということへ最大限配慮した上での,非常に抽象的な内容(表現)だとその時は理解しました.
もちろん,ネット上には,「陛下にそんなことを言わせるなんて」と言ったコメントもあったように記憶していますが,その時の私の認識では,それを超えて,政治的な影響を与えるものではないので憲法上の問題としてはセーフだろうと,憲法を学んだ立場の人間として理解しました.
しかし,その発言には,男尊女卑とも言える男系男子の皇位を優先する旧宮家からの養子案等を提案する政治家に対して,1人の父親としての抗議の意思が込められていたのではないかと,最近では理解するようになりました.
まず,私ごとで恐縮ですが,娘2人の父親です.
上の子は,すでに成人しましたが,小学校高学年か中学生の頃に,その子に対して,このようなことを言ったことがあります.
「バカな男と付き合って辛い思いをしても,それは自業自得だ.
でもな,『女のくせに』とか『女なんだから』と言って下に見るやつと付き合う
ことは絶対に許さん」
これまで,上の子から,誰と付き合っているとか報告を受けたことがあるわけではありませんので,この辺の事情は分かりませんが,自分の子どもが女性であるという偶然の出来事により,人としての可能性を否定され,不遇に扱われる理由はないはずです.
自民党と日本維新の会,そして政府の提案する皇室典範の改正案は,端的にいえば,男系男子のみが天皇になる資格を与えられるべきだとするものであり,明らかに,男尊女卑を前提とするものです.
この男系男子による皇位継承について歴史的な事実は「重い」とか言っていますが,女性の天皇が存在したことも過去にはあり,それは確固たる事実です.
何が「重い」のでしょうか?
このような政治の状況に対して違和感を覚えるの私だけではないはずですが,ただ,そのような感覚は,どこにでもいる国民の1人としての感覚にしか過ぎないはずです.
しかし,これが現在の天皇であれば,話は別ですよね.
だって,このような皇室典範の改正案は,娘を子に持つ現役の天皇からすれば,その唯一の子の人格を直接的に否定することに他ならないものだからです.
私自身,天皇や皇族は,基本的には,天皇及び皇族という制度を,本音ではやめたいと思っていると想像していました.
ところが,最近,新聞の下の方にある週刊誌の広告を見ていた際,現在の天皇が,子に対して,天皇としての教育をしていることを想起させる見出しがあり,やや意外に感じられました.
しかし,この見出しがもし真実だとすれば,現役の天皇は,皇室という生まれながらに背負った宿命(自らの努力で変えられる運命ではありません)を理解した上で,(このように思っているかどうかは知りませんが)自分と同様に,それから逃れられないであろう自分の子に対して,「天皇」として生きることの意味を教え,その地位から逃れられない人生であっても,その人生を実りあるものとするために,父親として精一杯の教育を施しているのだろうと想像されるところです.
そのような中で,国会議員の多数による「国民の総意」という擬制の名のもとで,天皇の子が,女性であるという一事をもって,天皇になったら結婚が困難になるとか,男子を出産することを期待されるとか,ご本人からすれば(本来的には)余計なことを政治家が触れ回っているのが昨今の状況です.
私からすれば,皇族数の確保が政治家の仕事・役割の一つなら,皇族の結婚や出産という偶然の(少なくとも政治的ではない純粋な生の人間的な営みによる)出来事に左右されない天皇制を作ることが,政治家に与えられた本来的な役割だと思います.
もちろん,旧宮家からの養子というのはそのような目的があるのかもしれませんが,男尊女卑(男系男子による皇位継承)を前提とする以上,アウトです.
私は,幼稚園児の頃,とある園友とともに,
「大きくなったら天皇になる」
と言っていたことがありますが,まぁ,これが実現することはありません.そのため,私の子が,第三者(国民)から男子を出産することを望まれたり,私が男の子を養子に迎えることはありません.
でも,同じ娘を持つ父親として,皇室典範の改正に対して,自らの立場を踏まえ,政治的なメッセージを纏うことのない言葉で意見を述べた天皇の心境は,おそらく,娘から紹介された彼氏が,「女のくせに」と平気で述べる場面を目撃するや否や,私が感じるであろうその彼を殴りたくなるほどの衝動に,劣ることはないものと察します.
私自身,天皇制には消極的ですし,「陛下」と呼ぶ気もありません.
しかし,現状の皇室典範改正案の内容に関し,同じ,娘を子に持つ父親として,現役の天皇に対して,最大限の共感をこの「ひとりごと」で表したいと思います.