皇室についての議論

 もし,何らかの事情であなたが病院へ搬入され,その治療をどうするかなど,その後のことについて,医者,看護師,市役所の職員,自治会の役員が話し合って決めることとなり,あなたは当然のこと,その家族すら会議に参加できないとしたらどう思うでしょうか.

 ちょっと仰々しく言いましたけど,「自分」のことなのに,自分以外の他人で話し合いをして「自分のこと」を決めてしまうというのは,素朴におかしいと思いますよね.

 最近,皇室の存続のために皇族の在り方を各政党が議論していますが,そこには,皇族あるいは元皇族の方は誰ひとりいませんし,皇族が自ら意見を申し出ることができるプロセスは用意されていません.

 自分が病院へ搬送された場合と比較すると,やはり,おかしいですよね.

 ただ,これには理由があって,憲法上,天皇が政治的行為をしてはならないし,政治も天皇を政治的に利用してはならないことになっているからです.

 例えば,現在の天皇が「〇〇党の案を希望します」などと言った場合,天皇がその政党を支持するかのような印象を国民に与えてしまいますよね.それがまずいことはわかりますよね.
 逆の場合,例えば,どこかの政党が天皇をそそのかして,このようなことを言わせる,さらには,自分たちの政策について賛成の意思を表示させようものなら,この国は,天皇の国になってしまいます.

 ですから,天皇や皇族は政治に関わらないというのが絶対です.
 しかし,それでもやはり,議論のあり方が不自然だというのは忘れてはならないと思います.

 実際,この国では,自らのことなのに,それを「有識者」「専門家」という肩書きの方々だけで決めてしまうことが制度として存在します.

 例えば,精神障害を理由に病院への入院が強制的に決められるときに,本人がその意見を述べることは事実上可能ではありますが,当事者団体の関係者は,その中に含まれません.
 つまり,「有識者」「専門家」は医療関係者,司法関係者,行政職員でしか構成されず,精神障害の当事者が作る団体から,その制度における「当事者」という立場で意見を出す制度は作られていません.

 専門家である医者であっても,自分がその病や怪我を経験したわけではなく,当事者の症状を間接的に学ぶことで専門家を名乗っているだけでしかありません.
 本人と同じ状況に置かれたことはないはずなのに,その本人たちの意見を述べる制度になっていません.

 皇族について検討するための会議が国会議員などだけで行われていることは,憲法上の理由からではありますが,そうではない場面でも,この国は,当事者以外の者で,当事者の今後を決めてしまうということが行われています.

 そうであれば,皇族についての会議においても,憲法上の理由があるからと当然だと思うことなく,素朴に「おかしい」ということを自覚しながら,政治的な偏向性が反映されることなく,慎重に検討されるべきではないだろうかと思います.