【相談内容】
従業員が,作業手順を守らなかったことで,備品が壊れただけでなく,別の従業員が怪我をしそうになるなど,大変危険な状況となりました.
その従業員は,普段から作業指示を守らないことが多く,今回ばかりは何らかの(懲戒)処分をしなければと考えています.
処分をするにあたり何か注意をすることはありますか?
【回 答】
まずは,その従業員から,今回の件について業務報告(書)を求めましょう.
懲戒処分となれば,予め弁明の機会を与えるということなど,注意すべきことはありますが,まずは,処分をどうするか,懲戒処分の方向で処理するかどうかの判断のために,事実関係を押さえておく必要があります.
その場合,当の本人から,事実関係について報告を徴取しておくことが後々のためを考えれば有用ですので,報告書の作成を指示し,提出を受けておくことが望ましいです.理由は,後々,何らかの処分が検討されていると知るに至れば,そのようなこと(例えば,作業手順を守らなかった,別の従業員が怪我をしそうな状況にはなかった等)はなかったと,事実を否定する可能性があるからです.
そして,報告書を作成してもらうにあたっては,①そのときの客観的な状況(作業手順を守らなかった,別の従業員が怪我をしそうになったこと)が生じたことだけでなく,②そのこと(作業手順があることを知っていてそれを守らなかったこと)をわかっていた,認識していたことも含めた内容にしてもらうべきです.
この②については,「うっかり間違えました」ということであれば,単なるミスということになりますが,わかっていながら手順を守らなかったということであれば,単なるミスではなく,その責任は重くなることは避けられません.
これについては,人の内面の状況(主観)ですので,後で容易に覆すことが可能な場合が多くありますので,それについて,報告書の提出を求める段階で認めさせておくことが後々の処分の内容を決定するにあたって,手続的にも重要となります.