【相談内容】
長時間のデスクワークで腰痛や肩こりがひどいのですが,これは,労災にならないのでしょうか?
【回 答】
難しいと思われます.
理由は,日常生活や加齢の影響から業務の影響を明確に区別した上で,業務により疾病に罹患したと判断することが難しいからです.
仕事中に,何かに衝突され腰を痛め腰痛を発症したような場合であれば,業務によること(業務起因性)が明らかですから,労災と認められる場合は多くありますが,そのような出来事がない場合に腰痛を有するに至ったとしても,これが業務によるものと認められることは難しいと思われます.
また,頸肩腕症候群のような上肢障害についても,厚生労働省により「上肢障害の業務上害の認定」に考え方が示されており,その中で,「腕や手を過度に使用する機会は,仕事だけでなく家事や育児,スポーツ といった日常生活の中にもあります。また,上肢障害と同様の状態は, いわゆる『五十肩』のように加齢によっても生じます。」と示されていますように,その上肢の反復動作や過重性があるものしか認めないものとされています.
もっとも,基礎疾患を有しているとき,それが業務により著しく悪化したといえる場合には,事情が異なってきます.
腰痛ではありませんが,基礎疾患として有していた喘息により,発作を起こし心臓停止に至った事例について,労働基準監督署はこれを労災と認めませんでしたが,裁判所(東京高裁平成24年1月31日判決)は,慢性的な過重な業務により,喘息が自然の経過を超えて悪化したと認め,労災と判断したものがあります.
疾病の発症が業務によるものかどうかは,医学的な意見を参考に判断される場合がほとんどです.みなさんの抱える身体の不調について,それが仕事によることが強く疑われ,労災の申請を検討する場合には,まずは,医師にご相談してみるのが良いかもしれません.