【相談内容】
配偶者の振る舞いに耐えかねて,子供を連れて別居しようと考えていますが,何かアドバイスはありますか?
【ご回答】
別居して,仮に,配偶者から経済的な協力が得られなくとも,自らの収入や公的な給付その他ご親族の援助等で生活ができるだけの準備ないし目処をつけてから,計画的に行動に移されることをお勧めします。
<養育費や婚姻費用が請求できますよね?>
法律上,別居中であっても,離婚していなければ婚姻費用を配偶者に請求することはできますし,離婚後は,子供を引き取って養うのであれば,養育費を請求することもできます。
また,離婚に伴い,結婚してから築いてきた財産の半分を請求すること(財産分与)や,離婚の原因によっては慰謝料を請求することができる場合があります。
これだけを聞くと,別居・離婚しても,(元)配偶者から得られる費用で,経済的になんとかなりそうに思えますが,現実はそれほど甘くありません。
<養育費を払わない場合は給料を差押えできますよね?>
婚姻費用であっても養育費であっても,(元)配偶者が支払いをしてくれれば良いですが,必ずしも任意に支払ってくれるとは限りません。裁判手続(調停・審判)を経て,差押えまでしなければならない場合には,それまでにかなりの時間を要しますし,必ず差押がうまくいくとも限りません。
また,別居後,シェルターに一時的に避難することも考えられますが,いずれはそこを出る必要がありますし,その時に,すぐに新たな部屋が見つかるとは限りません。特に,子の転校を避けたいときには,選択肢は限られますし,何よりも,まとまった費用を支出しなければならないことに変わりありません。
<いつまでもあると思うな(元)配偶者と金?>
さらに,幸にして,婚姻費用や養育費が支払われるとしても,いつまでもそのような状況が続くとは限りません。(元)配偶者の経済状況や健康状態によっては,それらのがストップすることも十分にあり得ることです。
お金がないところからお金を取ることはできません。
私が直接離婚に携わった事件ではありませんが,自営業者である配偶者の経営悪化により,婚姻費用の減額を余儀なくされた方や,元配偶者の病状の悪化により,それまで支払われていた養育費がストップした方もいますし,(元)配偶者が逮捕され職を失いかけた方もいました。
また,生命保険の受取人も,離婚に伴い変更される場合が多いものと思われます。
<駆け落ちして結婚しましたか?>
確かに,経済的な状況に万全の体制が整わない限りは別居・離婚を我慢すべきだとまでは言いませんし,不幸にして,配偶者からの暴力等で別居することに一刻を争う(経済よりも身の安全の方が優先されるような)場合もあることは理解しています。
しかし,結婚したときのことを思い出してください。
多くの人は,住む場所も決めず,収入もないまま,逃げるように駆け落ちして結婚したわけではないと思います。いろいろな準備を経て結婚するに至ったはずです。
配偶者からの暴力がある場合であっても,警察に通報し,逮捕・勾留されれば,少なくとも10日間ほどは別居の準備ができるはずです。着のみ着のまま家から逃げ出さなければならないような最悪の状況は回避できます。
そのため,別居・離婚に備えて,あらかじめ市役所に相談するなどして,生活保護等の公的な給付について調べておきましょう。
また,弁護士にもあらかじめ相談しておきましょう。弁護士も,突然のご相談・ご依頼について,書類の作成や裁判手続の準備を行うことは,意外に手間と時間がかかるものです。法テラスを利用する場合,その申請と審査にも当然時間を要します。
そのほか,ご実家からの援助,自らの予想される収入等をにより,できる限り配偶者から自立して生活できるだけの目処が立てられるように,計画的に別居・離婚のご準備をされることをお勧めします。
以上について異論や批判もあるかと思いますが,ご参考になれば幸いです。