どっちだったっけ?
「これでお前『は』俺の女だ」?
「これでお前『も』俺の女だ」?
半年ほど前から,Webブラウザのトップページをヤフーにしておくことをやめました.理由は,意味なく各種サイトを閲覧して,時間を無駄に使うことに気づいたからです.
それに伴って,Yahooだけでなく,意味なくネットサーフィンをすることがなくなり,仕事などの調べ物をする以外に,ネット検索をすることもなくなりました.自分なりに,良いことだと思っています.
そんな折,久しぶりに,「検事正」という,自身の業務に関係しないワードを検索するに至りました(絶対に関係ないわけではありませんが,直接的な関係はありません.これに関する情報を知っておく必要があるかというとそうではないものです.).
目的は,部下に対する不同意性交罪で起訴された元検事正の行った発言が,冒頭の通り「は」だったか「も」だったかを確認するためです.
検索結果から,起訴された事件以外にも同様のことをやったことがあったんだろうと思うに至り,自認から否認に転じた理由について,なんとなく,自分なりに納得ができたように思いました.また,同じ法曹関係者として残念としかいいようがありません.
この事件について,報道では,第1回公判で,元検事正は起訴事実を認めたところ,一転して,否認したということのようです.
そして,これまでの弁護人が解任され,新たな弁護人のもとで否認「同意があると認識していた」と主張するに至ったというものです.
法的に見れば,この元検事正(被告人)の主張(弁解)は,故意がなかったというもので,罪を犯す意思がなかったことを理由に犯罪が成立しないと主張するものです.
しかし,この事件で,このような主張が認められるでしょうか?
報道で見聞きした情報(証拠により認められた事実ではありません)に基づく推察ではありますが,私自身難しいと考えます.
そのように考える理由は,次の通りです.
まず,刑事事件としては故意ではないとしても,よった部下を官舎に連れ込んで性交渉に及んだ行為自体に,過失はあったことにはなるはずです.
元検事正のいうとおり誤解があったとしても,部下からの申出により,(少なくとも事後的に)実際は同意がなかったこと理解するに至ったといえます.なぜなら,食事をご馳走すると申し出ていた事実や,口止めをしたからです.
次に,同意がなかったと認識した以上,被害者とされる部下に対して,自らの過失で重大な人権侵害行為に及んだということも同時に認識したはずで,そうすると「食事をご馳走する」ということが,その被害弁償として十分かということを考えると,不十分にすぎるのも程があります.
そして,組織を背景として口止めをしたとの報道もされていますが,過失であれば,そうすることにはならないのではないでしょうか.仮に口止めするとしても,食事をご馳走してという発想にはいたらないはずです.
以上の元検事正の態度からは,被害者に対する謝罪(間違いがあったら謝りますよね)があったとは考えがたく,そうであれば,事後的にも,自己に過失があったことを認めていたとは認められ難いはずです(要するに,同意なくやったとの認識に基づく態度だということです.).
そうすると,彼の行為は,同意があったと誤認して性交渉に及んだ場合にとるであろうものとはかけ離れているため,当時,「同意があった」と認識していたとは認め難いことになると思います.
それにもかかわらず,そのような主張をするに至った理由はなぜなのか?
単に,刑務所に行くのが嫌で,なんとか争ってあわよくば無罪にしたい(執行猶予でも構わない)という考えがあるのはその通りだと思います.
しかし,当時から現在に至るまでの事実関係に照らせば,これが難しいことは彼自身が一番よく理解しているはずです.
そもそも,彼自身,そのような弁解をする被疑者・被告人を取り調べ,訴追し,求刑し,有罪として刑務所に送ったことが数多くあったはずです.もちろん,無罪になった方もいるかもしれませんが,ケースとしてはまれなはずで,そのことも分かっているはずです.
そうすると,彼が否認に転じた理由は,余罪が出てくること(複数存在するであろう他の被害者が,これをきっかけに被害を申告すること)を懸念してというのが一番の理由ではないかと思い至り,上記のとおり検索したというものでした.
余罪が出てきて,これについて起訴されることはあまり考えられないとしても,そのような報道がされてしまえば,余罪についての報道と相まって,社会的には抹殺されたに等しいものとなるでしょう.彼自身もそれはよく理解していはずです.
そして,検索結果からは,やはり,「これでお前『も』俺の女だ」でした.
なお,「も」の意味が,単にこれまで性的な関係を持ったことがある女性が複数存在するから,ということしか意味しないといえばその通りです.
その場合には,「余罪」という表現は不適切ですし,私の推測も「邪推」の域を出ないものです.
しかし,その場合,真摯に交際して性的関係を有するに至った女性もいたものと思われますが,そのような関係にあった女性に対しても「俺の女」と考えていたのであれば,そんな方が検事をやっていたことは残念としか言いようがありません.