息子の借金で困っています

【相談内容】
息子が借金を残して行方不明になったということで,代わりに支払ってほしいと,催告書が届きます。
どうしたら良いですか?

【ご回答】
1,息子さんがご存命の場合

放っておけば良いです。
理由は,ご相談者さんには,それを返す「義務」がないからです。
また,催告書に何か返事を出さなければならないのではないかとご心配になるかもしれませんが,ご返事を出さなければならないという法律上の「義務」もありません。

もっとも,催告書が届くのを止めたいのであれば,支払いをする意思がないことを文書で伝えた方が良い場合もあるかもしれませんが,ケースバイケースだと思われます。

なお,どうしてもお支払いになりたい場合にまで,それを止めるという趣旨ではありませんので,その点はご自由にされてください。

2,息子さんが亡くなっていた場合

息子さんに子供がいない場合,ご相談者さんがその借金を相続する可能性があります。
相続しないためには,家庭裁判所に相続の放棄をしなければなりませんので,その場合には,お急ぎになってください。

なお,借金を上回る遺産があるのであれば,それらを相続して,その中からお支払いになるということも可能な場合もあります。

3,保証人となっていた場合

保証人としてお支払いにならなければならない可能性が高いです。
また,保証人になったつもりがないのに保証人となっていたような場合には,保証人として裁判が起こされる可能性も高くなりますので,お早めにご相談されることをお勧めいたします。

「労災は使わないで」と言ったらどうなるか?

【相談内容】
従業員が仕事中に怪我をしたのですが,取引先の仕事をしている最中の事故だったので,取引先から労災にしないで欲しいとお願いされています。
従業員に対して,休業期間中の給料を支払うことを約束して,労災を使わないように対応してしまって良いでしょうか?

【ご回答】
とてもリスクが大きいです。
労災を使わないほうが良い場合というのはなかなか想定し難いですし,監督署への報告義務を免れるものではありません。
また,損害賠償も含めて,全ての補償ないし賠償を行うことは相当な負担となることが予想されますので,再考されるべきです。

1,労災保険及び賠償保険
労災保険を使うかどうかは従業員の自由ですが,会社が,労災から給付を受けられる治療(費)や休業補償を支払うのであれば,使わないという選択肢も取り得ます。
もっとも,労災で受けられる補償は,従業員の損害の一部でしかありません。
治療費や休業補償だけですまない場合(例えば,障害が残るような場合。)に備えて任意の賠償保険に加入しておくべきです。
その上で,労災から受けられる補償は,可能な範囲で受けておくべきです。

2,労働者死傷病報告
仮に,労災保険に補償を請求しないという選択肢はあるとしても,従業員が労災により休業した場合,「労働者災害死傷病報告」という労働安全衛生法に規定されている労働基準監督署長への報告をしなければなりません。
これについては,事業主が提出しなければ,「労災隠し」として罰せられる可能性がありますので,労働者災害死傷病報告の提出は必ず行ってください。

過去の経験からすれば,会社が休業補償を支払うと約束して,従業員に労災を使わないようにしてもらった場合であっても,従業員は,「十分な補償を受けられないのではないか?」という不安から,ほどんどの場合,労働基準監督署に相談に行きます。
そして,労働者死傷病報告を提出していれば良いのですが,それをしていなければ,「労災隠し」が発覚することとなります。
そうなると,事業場が捜索差押の対象となり,最終的には,刑事罰を課せられることとなります。

3,まとめ
労災が起きたときは,労災保険を使った方が良いでしょう(もちろん,労災かどうかの争いがある場合は別です。)。
さらに,労災事故による損害賠償は,労災だけでは不十分ですので,任意の賠償保険をかけておくべきです。
加えて,労働者災害死傷病報告は,速やかに提出しましょう。

「肩が上がらなくなりました。労災請求したいのですが」と言われたときどうするか?

【相談内容】
従業員から,「仕事で肩が上がらなくなりました。労災請求したのですが。」と言われました。
会社には,肩が上がらなくなるような業務はないと思うのですが,どうしたら良いでしょうか?

【ご回答】
労災請求したいのであれば自分でするようにお伝えください。
労災を請求するのは,従業員さんと労働基準監督署の問題となりますので,事業主としてそれを止めることはできません。

ただし,従業員さんから,「事業主証明」欄に記載を求められても断ってください。
事業主証明欄に記載する内容にもよりますが,その記載によっては,仕事によって労災となったことを認めたと判断されてしまう場合もあります。

そのため,事業主証明欄に事業主の証明がなければ,労働基準監督署から連絡があり,証明をしない理由等を尋ねられるはずですので,その際に,理由をご説明ください。

なお,従業員が労災により休業した場合,労災請求とは別に,「労働者災害死傷病報告」という労働安全衛生法に規定されている,労働基準監督署長への報告をしなければならない場合があります。
これについては,事業主が提出しなければ,「労災隠し」として罰せられる可能性がありますので,労災請求は放っておいても,労働者災害死傷病報告の提出の要否については,慎重にご検討ください。
場合によっては,専門家にご相談の上対応してください。

従業員を注意したら反対に「パワハラです」と言い返されました

【相談内容】
従業員を注意したら,「パワハラです」とその従業員から言いかえされました。
これでは,問題のある従業員が好き勝手なことばかりしてしまいます。

【回答】
一般的に,何らかの言動がパワハラと言われる場合は,①その従業員自体への攻撃となっている場合,②従業員の行為に対する注意ではあるが,言い方に問題がある場合に大きく分けられます。
ですから,そのような場合でなければ,堂々と,注意すべきことを注意して問題はありません。

①の典型例は,頭を叩くなどの暴力を振るい,身体的に攻撃する場合や,「ばか」,「新入社員並みだな」だとか,その従業員自身の人格を言葉などで非難ないし侮辱して攻撃する場合です。

しかし,昔の時代劇ではありませんが「罪を憎んで人を憎まず」と言うように,その従業員自身が悪いのではなく,その従業員の「行為」を問題として指摘して,その改善を求めなければなりません。

職場内で上下関係はあるにせよ,お互いに人間であり,雇用関係の範囲で時間を共有するだけの関係である以上,身体的な攻撃はもちろん,個人の性格等の内面を攻撃することも刑法の犯罪にも該当しえますので,絶対に避けるべきです。

②の典型例は,例えば,従業員が,遅刻したときに,そのことについて「何度言えばわかるんだ」などと他の従業員の前で怒鳴りつけるような場合です。

遅刻したという事実自体は問題のある行為といえます。ですから,そのこと自体を注意することは問題とはいえません。
しかし,怒鳴りつけるという注意の仕方では,言い方自体が相当性を欠くことになりますので,やはり,パワハラとなりえます。また,他の従業員の前でとなれば,本人の名誉感情を侵害することとなり,その点で従業員自体への攻撃にもなりかねません(もちろん,密室であれば大声で怒鳴って良いというものでもありませんので,その点は取り違えないよう注意してください。)。

なお,パワハラ指針(案)では,従業員の問題行動を前提として,「一定程度強く注意すること」はパワハラに該当しない場合として例示されていますが,「一定程度強く」のニュアンスは非常に不明確です。
ですから,基本的には,感情的に注意するようなことは行わず,就業規則(服務規律規定等を含む。)に従い,指導書や注意書を交付するなどの対応を粛々と行うことをお勧めします。
また,上記①②の分類は,パワハラ指針(案)とは異なった視点での分類ですが,同指針を理解する際にも有用な視点だと考えられます。

私の姓を残すために,娘の夫と養子縁組したいのですが

【お問い合わせ】

私には娘が二人いますが,どちらも結婚して,私の姓を名乗っていません。

そこで,私の姓を残すために,長女の配偶者と養子縁組をしたいのですが,何か問題はありますか。

【ご回答】

養子縁組をすることで,確かに,娘さんの配偶者にあなたの姓を名乗ってもらうことは可能ではあります。

しかし,そうするかどうかは,よくお考えになった方が良いと思います。

理由は,娘さんとその配偶者さんとが,将来的に離婚するようなことがあると大変だからです。

以前,とある方から,養親(養子縁組をして自分の親になった者)が亡くなったので,遺産を相続したいという相談を受けたことがあります。

この方は,配偶者さんの親と養子縁組をしたのちに,離婚はしたけれども,養子縁組については,離縁することなくそのままにしていたとのことでした。離婚後,配偶者さんとも養親とも付き合いはなくなったそうですが,最終的には,元配偶者と遺産を争う関係になっています。

あなた様の場合,この養親と同じ状況に置かれることがないとは限りません。

その辺も踏まえて,養子縁組をするかどうか,するとしてどのタイミングで行うかは,よくご検討された方が良いと思います。

今更ではありますが,娘さんが結婚する際に,娘さんと配偶者さんに,あなた(娘さん)の姓を名乗ってもらうことが,このような問題を回避する方法だったと思われます。

仕事を辞めさせてくれませんか?

【問い合わせ内容】

1年契約でアルバイトを始めましたが,学業(大学)が忙しく,アルバイトを続けて行けそうにありません。辞めることはできますか?最初に勤務してからまだ1か月ですので,その分の給料は貰わなくても構わないと思っています。

【ご回答】

結論から言えば,辞めることはできます。

ただ,1年間という約束で契約ですので,途中で辞めるためにはそれなりの理由が必要にはなってきます。

しかし,雇用関係は,首に縄をつけて強制的に仕事をさせることまではできませんので,そのような意味では,あなたが出勤せずに,退職願を出すことで,結論として辞めることはできます。あとは,雇い主から,契約期間を待たずに辞めたことで損害が生じたという理由で,損害賠償を求められるかもしれません(あまり考え難いとは思いますが。)。

ちなみに,余計なことですが,あなたのいう「学業が忙しく」というのは,仕事を辞めたい本当の理由ではないように思います。アルバイトを開始されてまだ1月程度ということからすれば,本当は,仕事がキツいとか,職場が厳しいということが理由のように推測されます。

職場で,法律に違反して長時間労働が行われているような場合や酷いハラスメントが行われるのであれば別ですが,学業との両立を目指しながら,最初の約束した期間アルバイトを続けて,社会に出ていくための経験を積まれた方が,今後の財産になると思います。

とある社労士の先生のご活躍

先日,とある社労士の先生が,その顧問事業場の担当者を連れて,私の事務所にやってきました.相談内容は,退職した労働者から残業代(約260万円)の支払いを求められているとのことでした(もちろん,金額に争いはあります.)が,本日,その先生から

「金額も減らすことができ,納得のいく内容で和解できました」

と連絡がありました.

この件では,当事務所に来所された際には,私が事実関係を検討し,事件の見通しを説明した上で,依頼を受けた場合の費用等の説明もしました.その時点では,その先生もその事業場の担当者も,私に依頼をする意向でした.しかし,その先生が

「この件で,労働基準監督署からも呼び出しを受けていて,監督官からは『120万円は支払いが必要でしょうね』と言われているので,それだけで部長(注:事業場の担当者)はとてもストレスが溜まっています.」

と言ったので,私はその先生と事業場の担当者に対し

「あ〜,そんな状況なんですね.それなら先生がご対応されたらいいですよ.弁護士でなくとも大丈夫ですよ.私に依頼すると,この金額だと,ちょっと割高になるかもしれませんから」と言い,その社労士の先生に今後の対応方法をアドバイスし,相談料だけ支払ってもらい帰ってもらいました.そうしたところ,冒頭の吉報が届いたというものです.

長い間,社労士の先生方に対し,紛争解決の研修を行なっておりますが,残念ながら,受講された先生方から,目に見える成果をお聞きする機会があまりありません.そのような中で,私のアドバイスにより,社労士の先生の対応が良い結果につながったことと,今回の経験が,その先生の大きな自信となるであろうことを,とても嬉しく思ったところでした.

お金に困って自殺を考えたときは・・・

【お問い合わせ】

借金があり,自殺して楽になりたいと考えています。

【回答】

あなたがどうしても自殺するというのであれば,私はそれを止めることはできません。

しかし,それが借金に関することであれば,①任意整理,②破産,③民事再生といった方法により,借金の負担をなくすことはお手伝いできます。

もちろんその場合,クレジットカードを使用するなど,これまでと同じような生活はできないかもしれませんが,借金を理由に自殺したいと考えることはなくなると思われます。

なお,私は,借金の取り立てをする立場で依頼を受けた事件について,債務者が自殺した経験があります。私自身は依頼者の正当な利益の実現を図るために仕事をしたまでですので,何も後ろめたいことはないと考えています。ただ,その債務者が,死を選ぶ前に,私以外の弁護士に相談してさえいれば,何か違った方法を選ぶことができたのではないかと思われます。

ぼったくりバーに入ってしまったら

【お問い合わせ】

ぼったくりバーに入ってしまいました。今まさに,法外な額を請求されています。

【回答】

とりあえず,警察に駆け込みましょう。近くの交番で構いません。

請求された料金からして,それが本当に「ぼったくり」と言えるかどうかは別にして,それが詐欺等の犯罪行為に該当しなければ,本来的には,警察の出番ではありません。

しかし,法外な額を請求されている状況で,お店側もそのことが分かっているのであれば,あなたが警察に駆け込むことで,ある程度,お店側も譲歩することが見込まれます。

また,警察も,このようなケースを単なる民事上の争いだとは考えていないようですので,まずは,警察の力を借りるべきです。

もし仮に,一旦お金を払ってしまうと,後日,ぼったくりだということを理由にお金を取り戻すことは,極めて難しいと思われます。

なお,数年前の元旦の午前1時頃,お世話になっている方から私の携帯に電話がかかってきました。どうやら,空いているお店がなく,客引きに誘われるがままお店にはいったところ,法外な金額を請求されたとのことでした。3名で入店したとのことでしたので,とりあえず,交番へ行くようにアドバイスをしました。そうしたところ,警察官立ち合いのもと,交番の中で,ぼったくりバーの店員と私の知人との間で,飲食代金を確定するための和解が行われ,無事に解決したとのことでした。

何れにしても,怪しいお店には入らないということが一番だと思われます。

「お金を貸して」

【お問い合わせ事例】

知人から,お金を貸して欲しいといわれています。

【回答】

1,貸すべきではない

あなたが貸金業を営んでいるのでなければ,知人ということを理由に貸すことは避けるべきです。お金を必要とする理由はともかく,銀行で借りることを勧める,一緒に窓口まで行くなどすることが賢明だと思われます。

単に生活に困っているということであれば,市役所で生活保護の申請を行う,ハローワークに行き仕事を探すなど,アドバイスするべきです。

2,あげた方が良い

どうしてもなんとかしてあげたいと思うのであれば,貸すのではなく,可能な範囲で,お金をあげたほうが良いと思われます。「本当に返してくれるだろうか。」と疑心暗鬼になって知人・友人関係が破綻していくぐらいなら,その方が良いと思います。

あるいは,財布の中にあるお金を全て差し出して,それ以降の知人・友人関係を絶ってしまった方が良いかと思います。

3,貸すのであれば

一応は,返してもらえないことを覚悟すべきです。

借用書を作成することは,最低限行うべきです。可能であれば,保証人をつける,不動産を担保にいれるということも行うべきです。

さらに,現金で渡すのではなく,銀行口座に振り込んで貸す方が良いでしょう。理由は,返してもらえないときに,銀行の預金を差し押さえることが必要な場合があります。その時,預金がどこにあるのかを調べることは意外に大変です。また,振込であれば,お金を渡したことが記録に残ります。そのようなことから,銀行口座を確認できるよう,振込にしておく方が良いと思われます。

なお,私が弁護士を始めてから以降,個人間でのお金の貸し借りで,最終的にお金を返してもらったという方を見たことがありません。もちろん,返してもらえないから弁護士事務所に相談にくるのだと思いますが,とある依頼者は,お金を貸す時に,振込で貸したことから,たまたま,知人の預金口座を知っていました。そのため,裁判を起こし,判決が出た後に,預金口座を差し押さえて,約160万円を取り戻したことがありました。この事件は,引き続き,財産を探索して,返還を求めている最中です。

 

お金を貸す時は,本当に貸すべきか,貸すとすればどうすべきか,よく,ご検討ください。あらかじめご相談に来られた上で,判断されると良いかと思います。